こんにちは。みきです。
私は自社クラウドサービスのサポートエンジニアをしていますが、問い合わせをしてくる方は情報システム部門、通称「情シス」の皆さんです。日々情シスの皆さんと接していて、本当に忙しそうだなと思います。社内の問い合わせ対応や情報システム利用の申請対応、物品の調達や中長期のIT戦略を立てるなど、幅広い業務に対応されています。
中でも社内からの問い合わせは、多い日もあれば少ない日もあります。また、システム障害などのトラブルが起きると、問い合わせが殺到するので、なかなか所要時間が読めません。
そんな1つひとつの問い合わせを、迅速、正確に解決に導くためには「切り分け」がとても重要です。そこで今回は、問い合わせ対応で重要となる「切り分け」について解説したいと思います。
切り分けとは?
問い合わせ対応における切り分けとは、どこに問題があるのかを特定するためのプロセスです。問題が発生している部分と、問題がない部分を明確にすることで、手戻りが少なく、原因の特定が速くなります。
また、メーカーや技術部門にエスカレーションする場合にも役立ちます。「ここまでは事実でここからは不明」などと引き継ぎをすることで、担当者が変わってもユーザーに1からヒアリングをする必要がなくなり、お互いスムーズに対応を継続できます。
切り分けの手順
ユーザーの言うことをすべて聞き取る
まずは、ユーザーからの情報をすべて聞き取ります。ユーザーは自分が話したいことを話したい順番で話すことが多いです。まずは一旦、その情報を全て聞き取って把握します。
不足している情報を5W1Hで質問する
ユーザーからの情報だけでは抜け漏れがありますので、不足している情報をこちらから質問します。以下のように、5w1hの観点で聞き出すと良いです。
- いつから?いつまでは問題がなかった?
- どの端末で?
- どんな事象が発生しているのか?(エラーメッセージが出る場合はキャプチャをもらう)
- どのような手順で発生したのか?
- 何人くらい発生している?
- 何のアプリか?
事実と推測を分ける
ユーザーからの情報には、事実と推測が混ざっていることがあります。こちらから「実際に画面を見たのですか?」「⚪︎人問い合わせが来たのですね」などと質問しながら、情報を事実と推測に分けます。
特に、誰かの代理で問い合わせしている場合は、代理の人が「〜だと思います」などと推測で話をしてしまって、実は思い込みだった…ということもあるので、「そうなんですね」と話を聞きながらも、全て鵜呑みにしないようにします。
仮説を立てる
聞き取った情報から、原因についての仮説を立てます。これは自分の勘で構いません。
社内でよくある問い合わせに当てはめてみたり、ChatGPTに質問して、原因となりそうな項目を複数挙げてもらい、その中から一旦決めてみるのもいいですね。
アプリ自体の不具合か、一時的な動作不良か、ユーザー固有の環境下での不具合かなど、知識や経験を積むことで、当たりをつけやすくなり、仮説の精度が高まっていきます。
検証する
自分の仮説が合っているかを検証します。
アプリ自体のバグかもしれない場合は、ユーザーから聞き取った手順通りに操作して再現するかを検証します。検証する前に、アプリバージョンやOSバージョンなど、できるだけユーザーと同じ条件に揃えた上で検証するのがポイントです。
ユーザーの環境でないと試せない場合は、試してほしいことをステップごとに記載して、メールやチャットなどのテキストデータで送って仮説が合っているか検証してもらいます。
もし検証した結果、仮説通りにならなかった場合は、別の仮説を立てて検証します。検証時に得られた情報はしっかりと記録します。この仮説→検証を繰り返します。
エスカレーションする
もし原因が分からない場合や、アプリのバグが見つかった場合は、技術部門やメーカーにエスカレーションします。これまでユーザーから聞き取った内容と、自分が検証した内容を、それぞれ分けて担当者へ伝えます。
画面キャプチャなどのエビデンスも添付します。
案内する
原因が分かったら、原因と対処法をユーザーへ案内します。調査に時間がかかる場合や、原因不明な場合も、途中経過をユーザーへ案内します。
以上が、問い合わせの切り分けの手順です。
ケーススタディ
では、具体的な例に当てはめて、切り分けの手順を考えてみましょう。
デスクトップアプリの〇〇の部分が表示されない
デスクトップアプリの場合は、Web版でも同じ事象が再現するかどうかが1つのヒントになります。
Web版でも再現する場合は、アプリ全般の不具合である可能性が高いので、自分の手元でも事象が再現するか試してみます。
Web版では問題ない場合は、そのユーザーが利用しているデスクトップアプリやPCに何か問題がある可能性が高まります。まずは以下のような質問をします。
- デスクトップアプリのバージョン
- Web版でも同じ事象が発生するか
- PCのOSとバージョン
その上で、以下の一般的な対処法を順番に試して、改善するか確認してもらいます。
- 再読み込み
- アプリ再起動
- PC再起動
- アプリをアンインストールし、最新バージョンで再インストールする
デスクトップアプリは古いバージョンのまま使い続ける人が結構いて、それが原因で不具合が起こる場合があります。また、古いデスクトップアプリはサポートが切れている場合があり、セキュリティ上もよくないため、アプリの定期的なバージョンアップが必要です。
モバイルアプリで〇〇というエラーメッセージが出る
モバイルアプリは、iOS版とAndroid版で少々仕様が違うことがあります。そのため、OSとバージョンは確認しましょう。まずは以下のような質問をすると良いです。
- OSとバージョン
- モバイルアプリのバージョン
- 端末名
- どのような操作を行なって発生したのか
- エラーメッセージのキャプチャ
- 何度やっても同じエラーになるのか
次に、以下のような一般的な対処法を試してもらいます。
- アプリ再起動
- 端末再起動
- モバイルアプリの再インストール
モバイルアプリの場合は、「困ったら再起動」すると、一時的な不具合は解決することが多いです。それでも解決しない場合は、モバイルアプリのアンインストール→端末再起動→再インストールをすると、アプリが一度リセットされるので、解決する可能性が高まります。
アンインストール前は、アプリのログインIDやパスワードを覚えているか確認しましょう。
これで解決しない場合は、アプリ自体のバグの可能性が高いです。
まとめ
切り分けをして、問い合わせの早期解決を目指そう!
切り分けは地道な作業ですが、1つずつ確実に可能性を絞り込んでいくことができます。
結果的には手戻りが少なく原因にたどり着けるかと思いますので、是非切り分けの手順を覚えて、繰り返して実践してください。