服を増やすことに夢中だった
20代のころの私は、とにかく服の数を増やすことばかり考えていました。
白いシャツを持っているから、次は緑。
無地ばかりだから、ストライプにしよう。
そんなふうに「持っていない色や柄」を埋めるように買い足していたのです。
けれど、朝になって服を着ると、何か違う。
着ては脱いでを繰り返し、時間はギリギリ。
服を増やしているのに、なぜか「今日着る服がない」。
今思えば、私は「服を選ぶこと」に疲れていたのだと思います。
「服を買うなら、捨てなさい」との出会い
ある日、本屋で手に取ったのが、
地曳いく子さんの著書『服を買うなら、捨てなさい』でした。
そこに書かれていたのは、
「好きなコーディネートなら、週2回は繰り返し着ていい」という言葉。
「えっ、同じ服を何度も着ていいの?」「似たような色でもいいの?」
当時の私には、目からウロコが落ちるような考え方でした。
たしかに、自分が気に入っているコーディネートの日は、
迷わず気分よく出かけられます。
反対に、無理して買った「自分が持っていない色や形」の服を合わせると、
どこかちぐはぐで、
コーディネートから不協和音が聞こえてくるようでした。
それまで私は、“洋服をたくさん持っている人”こそおしゃれだと思い込んでいました。
でも、本当の「おしゃれ」って、人からどう見えるかよりも、
自分がしっくりくるかどうかなんですよね。
似合う服を、何度も着る
それからは、自分に似合う服を堂々と着るようになりました。
パーソナルカラー診断や骨格診断の結果を参考にすると、
さらに自分のスタイルが明確になりました。
これまで「ピンクは似合わない」と決めつけていたけれど、
「青みピンクは似合わないが、サーモンピンクなら似合う」と気づいたのです。
また、「似合わない服」の理由も分析するようになりました。
落ち込むのではなく、「なぜ似合わないのか?」「組み合わせを変えれば改善できるか?」と試す時間が、楽しくなっていきました。
お気に入りの服が劣化してきたら、似た色やシルエットの服を探して新調。
いわば、自分の“定番”を育てていく感覚です。
ベーシックな服こそ、上質で丈夫なものを選ぶ。
少し値が張っても、何度も着ればもとは取れます。
なにより、着るたびに「これ、好きだな」と思えることが、いちばんの満足です。
以前は「一万円で何点買えるかな」と考えていましたが、
アイテム数を絞った今は、一つひとつに時間とお金をかけられるようになりました。
服を減らしたら、迷いも減った
いまでは、1シーズンで5パターンほどのコーディネートを決めています。
平日は曜日ごとに固定し、雨の日用もスタンバイ。
土日は、その中から気分で選びます。
朝の「何着よう?」の迷いがなくなり、そのぶん心に余裕ができました。
ただ、週次ミーティングで同じ服が続くと
「それしかないの?」と思われそうで(笑)、
たまに曜日をシャッフルしています。
似たような色や形ばかりでもいい
毎日保育園で会うママたちの服装。
おととい何を着ていたか、正直、覚えていません。
自分のコーディネートを気にしているのは、自分だけ。
たとえ「また同じような服?」と思われても、
自分に似合うなら、それでいいんです。
自分に合う服を何度も着ることで、少しずつ“自分の軸”が育っていく気がします。
似合う色やシルエットを見つけたら、臆せず繰り返し着よう。
そうすることで、自然で軽やかな雰囲気をまとえます。
冒険するときは、店員さんに選んでもらう
自分の似合う色や形に囲まれていると安心しますが、
たまに冒険するのも悪くありません。
そんなときは、お気に入りのショップに行って、店員さんに選んでもらいます。
価格帯もわかっているので安心です。
「会社に着ていくトップスを探していて…」
「春秋に羽織れる薄手の上着が欲しいんです」
と、具体的なシーンを伝えて選んでもらいます。
必ず試着をして、似合う・似合わないは自分の直感を信じます。
以前、店員さんがサーモンピンクのニットを持ってきたことがありました。
「ピンクは似合わないんですよね…」と言いながら試着すると、肌がワントーン明るく見えたんです。
「ピンク全般ではなく、青みピンクが似合わなかったんだ」と気づきました。
こうした発見があるので、たまにプロに頼ってみるのも楽しいですよ。
似合う服を選ぶことは、自分を大切にすること
たくさん持たなくてもいい。
似たような服でもいい。
自分を心地よく包んでくれる服を、何度でも着ていいんです。
大切なのは、バリエーションを増やすことではなく、
「自分らしい少数精鋭のアイテムたち」。
似合う服、似合う色を着続けていい。
それは、自分をやさしく肯定する方法のひとつだと思います。

